Loading...

Internet Explorer (IE) での当サイトのご利用は動作保証対象外となります。以下、動作環境として推奨しているブラウザをご利用ください。
Microsoft Edge / Google Chrome / Mozilla Firefox

close
menu
img

「現場や部下」とつながる
ストーリーテリング

Facebookへ共有 Twitterへ共有 LINEへ共有 noteへ共有
  • 広江 朋紀

    広江 朋紀 Tomonori Hiroe
    株式会社リンクイベントプロデュース ファシリテーター

    産業能率大学大学院修了(組織行動論専攻/MBA取得)。出版社勤務を経て、2002年に(株)リンクアンドモチベーション入社。HR領域のエキスパートとして、採用、育成、キャリア支援、風土改革に約20年従事し、講師・ファシリテーターとして上場企業を中心に1万5,000時間を超える研修やワークショップの登壇実績を持つ。参加者が本気になる場づくりは、マジックと呼ばれるほど定評があり、「場が変わり、人がいきいき動き出す瞬間」が、たまらなく好き。主要書籍7冊、論文寄稿、大学での特別授業、日経MJへの連載寄稿など多数。育休2回取得。3児の父の顔も持つ。

マネジャーがマネジメントすべき5つの結節点の2つ目は、「現場や部下との結節点」だ。どんなに優れた戦略や戦術を描いても実践するのは、現場の最前線で働く、感情を持つひとりひとりの個人であり、あるべき正論や定量的な目標数字だけをかざすのではなく、人の心を動かし行動を喚起する働きかけが必要である。古今東西、名のあるリーダーは、人の心を動かすために、ストーリーを語ることで、部下を目覚めさせ、大志のもとに通常では成し得ない偉業の実現に導いてきた。本稿では、「ストーリーテリング」、すなわち相手の共感や行動の変容を促すメッセージを物語を通して伝える手法の意義と事例、そして実践に向けたヒントを解説する。


共感と行動を引き出すコミュニケーションの型

「あなたは、経営の方針をそのまま伝えたり、指示を一方的にしていないだろうか?」

経営の戦略や方針についてメンバーの共感を引き出すためには、情報をそのまま転送するのではなく、あなたの言葉で、そしてあなた自身を主語にして、内容を現場や部下が自分事として捉えられるようにストーリーに編集して伝えることが必要だ。

コミュニケーションパターンと組織の状態

この図を見てほしい。あなたの日常的なメンバーへの伝達スタイルはどのパターンになっているだろうか? メンバーの共感を呼び起こし、新たな行動を喚起するには右端の翻訳編集型のストーリーテリングを行っていくことが最も好ましい。

伝えたいメッセージをストーリーとして編集し、物語ることは、ロジックを超えて感情に訴え、人や組織を前進させる力がある。

職場で実践できる6種類のストーリーテリング

人類は、有史前からストーリーを語り継いできた。火を囲み、自らの体験や教訓などを脈々と語り、集団の規範を継承してきた。こうしたストーリーには、聞き手の感情に訴えて想像をかきたてる確かな力がある。ビジネスシーンでも、相手の共感や行動の変容を促すメッセージを物語を通して伝えるストーリーテリングには期待が寄せられている。では、あらためてストーリーテリングとは、何であろうか?

ストーリーテリングとは、相手の共感や行動変容を促すメッセージをそれらを想起させる物語(ストーリー)を通して伝えることであり、「変革性」「全体性」「開放性」「創造・想像性」の4つの効果がある。

ストーリーテリングの定義と効能

では、具体的に職場でストーリーテリングをする際には、どのような種類があるのだろうか。

メンバーが目の前の挑戦課題に不安を抱えて躊躇している時、理路整然と指示してもメンバーの心はそう簡単に動かない。相手の共感を引き出し、感情を揺さぶり意欲をかきたてる際に、以下6種類のストーリーのパターンが存在する。

職場で活用できるストーリーテリングのパターン

あなたは、職場でどのような種類のストーリーを語ることに興味を持っただろうか?

例えば、2つ目の"Why I am here" Stories「私(私達)はなぜこの場にいるのか」というストーリーを語った好例があるので紹介しよう。

Why I am here Stories「私(私達)はなぜこの場にいるのか」

いかがだろうか。「私達はなぜこの場にいるのか」、ここぞという場面でストーリーを語ることで心を揺さぶり新しい変化を生み出すことができるのがストーリーの力である。

聞き手を動かすストーリーのヒント

聞き手の心をつかみ、行動に駆り立てるストーリーを語るためのヒントを紹介しよう。

1.ストーリーは、障害・葛藤を扱うべし

人が物語を愛するのは、障害や葛藤のハードルを乗り越える変容というキーラインがあるから。「えっあの人が!?」という人がダイエットで大変身を遂げると希望と刺激になるように、「苦闘と救済」は、人類共通の心に刺さる物語の要素である。

2.ストーリーは、聞き手の存在を理解して組み立てよ

ストーリーは、聞き手との相互作用で命が吹き込まれる。伝えたい聞き手の現状や状況を理解したうえで組み立てることが必要。いきなり、変化を強いるのではなく、現在への感謝や承認を行い、そのうえで変化の必然性を訴える配慮も必要だ。

3.ストーリーは、自分をさらけ出し目標にコミットする

ストーリーは、きれいに話す必要はない。人は、リーダーの個人的体験や失敗談、弱さに親しみを覚える。リーダーが自らをさらけ出すことで、ストーリーに自分自身を重ねてつながりを覚える。そして、覚悟を示すコミットをリーダー自ら行おう。

ストーリーを組み立てる前に、職場で、どんなストーリーを語りたいのか? ストーリーの種類から選び、誰に語るのか? 聴衆の現在の状態やストーリーを通じて伝えたい意図、関連するエピソードなどを棚卸ししてみよう。

伝えたい意図やエピソードの棚卸

不確実な状況下こそ、センスメイキング

現在は、VUCAの時代と呼ばれて久しいが、目の前で起こっている不確実な環境にリーダーは怯むことなく、能動的な意味を与えてストーリーを語り、メンバーに納得(腹落ち)させ、新しい行動を生み出すリーダーシップが今、求められている。

アメリカの組織心理学者カール・ワイクは、「起きている目の前の現象に対して、能動的に意味を与える思考プロセス」のことをセンスメイキング理論と呼んだが、起こっている出来事をリーダーは、客観的に観察し、「今、何が起こっているのだろう?」「この変化は何を意味しているのだろう?」と自分に問いかけることも必要だ。

さあ、明日から現場に力を与えるストーリーを語ってみよう。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった時代の象徴を表すキーワード

Facebookへ共有 Twitterへ共有 LINEへ共有 noteへ共有

この記事が気に入ったら
フォローしよう!