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ミドルを覚醒させる
結節点マネジメント

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  • 広江 朋紀

    広江 朋紀 Tomonori Hiroe
    株式会社リンクイベントプロデュース ファシリテーター

    産業能率大学大学院修了(組織行動論専攻/MBA取得)。出版社勤務を経て、2002年に(株)リンクアンドモチベーション入社。HR領域のエキスパートとして、採用、育成、キャリア支援、風土改革に約20年従事し、講師・ファシリテーターとして上場企業を中心に1万5,000時間を超える研修やワークショップの登壇実績を持つ。参加者が本気になる場づくりは、マジックと呼ばれるほど定評があり、「場が変わり、人がいきいき動き出す瞬間」が、たまらなく好き。主要書籍7冊、論文寄稿、大学での特別授業、日経MJへの連載寄稿など多数。育休2回取得。3児の父の顔も持つ。

4月、組織が変わる大きな節目。新人の入社、管理職の昇進など、環境や体制が一新する季節。本コラムを読んでいる皆さんの中にも管理職として登用されたばかりの方も多いであろう。私自身も経験があるが、管理職になりたての際は、かつてなかった役割が一気に増加すると同時に成果も求められるため、目の前のことをやるだけで精一杯になりがちだ。


管理職の抱える制御不能な不安感

管理職の抱える制御不能な不安感

終わりのみえない業務、世代や価値観の異なるメンバーの育成、上司や経営からのプレッシャー、他部門や顧客からの要望やクレーム、家庭内では育児や家事の分担など、文字通り「全方位」から一気に襲われるような制御不能な不安感に苛まれるのも珍しくない。

スポーツに置き換えると想像しやすくなるが、未経験のポジションに、いきなりレギュラーで送り出されたら、どうなるだろうか?多くは、何をすればいいか分からず動きが止まってしまったり、本来の自分の持てる能力を十分に発揮できずに、気が付いたらゲームセットの笛の音を聞くことになるのではないだろうか。優秀なプレイヤーが、必ずしも優秀な監督になりえないことは、ビジネスの世界でも通底している。本来の中間管理職(マネージャー)のポジションは、読んで字の如く、組織の階層の中間に位置し、フォロワーの立場で上層部のリーダーに進言をし、リーダーの立場で下層部のメンバーを指揮し、志を共にするパートナーの立場で、水平方向の他部門や会社を超えたステークホルダーと共創するなど、「全方位」に影響力を発揮する結節点の役割を果たすことが期待される。

しかし、企業で行われる研修や教育機会は、たいてい、直属の部下に影響力を発揮できるようになるための下位接続のリーダーシップスキル習得に力を注がれ、上位接続、すなわち上司や経営に影響を及ぼすために必要なスキルや他部門との連携や社外への越境といった水平接続は、現場任せになっているのが実情である。

そこで、本コラムでは、マネージャーの皆さんが、暗中模索とならぬよう、全方位の結節点に光を当てて視野を広げ、現場ですぐに使える武器を提供することで、覚醒に導くことを狙いとしている。

結節点をマネジメントするという発想

以下の図は、マネージャーがマネジメントすべき5つの結節点を図示したものである。すなわち、①自分自身との結節点 ②部下との結節点 ③経営、上司との結節点 ④他部門との結節点 ⑤社外との結節点から構成される。

マネージャーがマネジメントすべき5つの結節点

① 結節点の強化は「自分自身」とつながることから始める

「あなたは自分を犠牲にしてマネジメントに身を捧げていないか?」

結節点を担う前に、自分のファウンデーション(自己基盤)を整える必要がある。自分が大事にしている価値観は何か?何のために仕事をしているのか?人生の中で気がかりなことは何か?こうした後回しにしがちな重要度の高い「自分の内側」と真正に向き合うことから始めよう。自分にも他社にもオープンマインドなリーダーに人は惹かれる。

②「現場や部下」とつながり、共感と行動を引き出す

「あなたは、経営の方針をそのまま伝えたり、指示を一方的にしていないだろうか?」

経営の戦略や方針についてメンバーの共感をひきだすためには、既成事実をそのまま転送するのではなく、あなたの言葉で、翻訳・編集して伝えることが必要だ。古今東西の名のあるリーダーは、ストーリーを語ることで、部下を目覚めさせ、大志の元に通常では成し得ない偉業の実現に導いてきた。

③「経営、上司」とつながり、可能性を拡げる

「あなたは経営や上司に忖度をして健全な衝突を恐れていないか?」

組織成果を最大化するには、部下にはリーダーシップを、上司にはフォロワーシップを発揮する必要がある。フォロワーシップの発揮には、時に経営や上司との健全な衝突も辞さない健全な批判力(提言力)が必要だ。とはいえ、批判をするには勇気がいる。そのためのパワー基盤となる上方影響力を知り、築こう。

④「他部署」とつながり全体最適を実現する

「あなたは自部署の利益を優先し、連携を失敗させていないか?」

時に、自部署の目標を達成させるには、他部署への協力要請が不可欠となるが、その呼びかけは他部署の利益と必ずしも一致しないことが起こる。有事の前に日頃から他部署のキーパーソンと関係作りをしておくことと立場の異なる相手に合目的性と協働のメリットを示すwin-winの関係を実現することが肝要だ。

⑤「社外のステークホルダー」とつながり、新しい価値を創造する

「あなたは、越境を恐れて、自分の成長を後回しにしていないか?」

自分のホームは、馴染みがあり快適だが、アウェイは未知領域であり、恐れて越境することを避けがちだ。しかし、自身の固定概念を棄却し「アンラーン」するには、組織や立場を超えた多様なつながりから触発の機会をつくりだすことが必要だ。越境で得られた知を自組織の営みに生かすことがリーダーと組織の成長に欠かせない。

以上のように、自分がマネジメントすべき対象をあらかじめ知っておくことが、転ばぬ先の杖となる。人は、どんなに忙しくとも全体観や見通しがついていれば、バーンアウトすることはない。むしろ、やりがいと誇りを持って仕事に打ち込むことができるようになるはずだ。

組織も生命体として生きている

従業員エンゲージメントの低い組織の特徴として、結節点に位置するマネージャーの機能不全がある。自身の部下やチームといった下位接続は、気にかけていても上司や経営への上位接続や他部門への水平接続といったコミュニケーションは、効果的になされず、やがて組織はサイロ化し、力を失っていく。変化を促進せず、妨げる存在として、揶揄される「フローズンミドル」(凍り付いた中間管理職)という表現もあるほどだ。

組織は、生命体として確かに生きている。人体に喩えるならば、コミュニケーションは血流であり、血の巡りを良くするには、部位間の溝に発生しがちな「詰まりや滞り」を解消する「結節点」の存在が必要不可欠なのである。

コミュニケーションは血流

インスパイアさせる存在へ

マネージャーになることは、不自由になることではなく、全方位に働きかけることで、自分一人では実現することのできない力や知恵、資源を手にし、未だ見たことのない絶景を仲間たちと分かち合える絶好のポジションであることを忘れてはならない。かつて、教育哲学者のウィリアム=ウォードはこんな格言を残した。

教育哲学者ウィリアム=ウォードの格言

この格言のTeacher(教師)の箇所をマネージャーに置き換えて改めてご覧頂きたい。最後の文に「偉大な教師(マネージャー)は、心に火をつける」とあるが、まさに、結節点を担うマネージャーは、組織の中に在る、多様な人たちの心の導火線に火をつける着火点として、自分も周りも照らすインスパイアできる存在として輝きを放つ存在でありたい。

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