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THE MEANING OF WORK京都会 村田製作所の取り組み

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  • 白木 三秀

    白木 三秀MITSUHIDE SHIRAKI
    早稲田大学政治経済学術院教授

    1951年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国士舘大学教授等を経て、1999年より現職。専門は労働政策、国際人的資源管理。現在、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所所長、国際ビジネス研究学会会長等を兼任。

  • 中島 彰

    中島 彰AKIRA NAKASHIMA
    株式会社村田製作所
    IoT事業推進部 データソリューション企画開発課

    2010年に総合電機メーカーに人事として入社。2017年から株式会社村田製作所に転職し、人事部採用課にてセンシングデータプラットフォームNAONAを活用した採用面接のPoCを企画、2018年11月からグローバル人事企画に従事。2020年6月より現職。

  • 林 幸弘

    林 幸弘YUKIHIRO HAYASHI
    株式会社リンクアンドモチベーション
    モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員
    「THE MEANING OF WORK」編集長

    早稲田大学政治経済学部卒業。2004年、株式会社リンクアンドモチベーション入社。組織変革コンサルティングに従事。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員として、日本で働く外国籍従業員のエンゲージメントやマネジメントなどについて研究。現在は、リンクアンドモチベーション内のR&Dに従事。経営と現場をつなぐ「知の創造」を行い、世の中に新しい文脈づくりを模索している。

「技術で勝る日本企業が、なぜ世界で負けるのか?」「日本企業が世界で勝負するために決定的に足りないものは、何か?」。不透明な時代のグローバル競争力を高めるために、具体的には何が必要なのか?この問いに答えるために、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所所長白木教授に参画いただき、「学術分野の研究成果や理論」と「産業界の現場での実践」のインタラクションを行う事例研究を立ち上げた。題して「京都会」。世界を舞台に戦う日本企業のグローバルHRの現場では、どのような挑戦が行われているのか?

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所、そして「京都会」とは

林 幸弘

白木先生、中島さん、この度はありがとうございます。「京都会」というクローズドコミュニティで行われている「日本企業のグローバルHRのレベルアップ」を目指した濃い勉強会の内容のダイジェストをTHE MEANING OF WORKというサイトで初公開ということでお集まりいただきました。

白木 三秀
白木

お声がけいただき、ありがとうございます。

林 幸弘

まずは白木先生から、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所について、ご説明いただけますでしょうか。

白木 三秀
白木

トランスナショナルHRM研究所は、2008年度、2009年度の2年間にわたり実施してきた文部科学省の産官学協働プロジェクトである「海外経営専門職人財養成プログラム早稲田大学コンソーシアム」(注1)の後を受けて発足したものです。同研究所は、多国籍企業における人的資源マネジメントに関する研究・提言、相互啓発を行うことを目的として、2010年4月に設立された早稲田大学総合研究機構内のプロジェクト研究所です。バートレット&ゴシャール(注2)によると、多国籍企業のマネジメント組織の在り方には「マルチナショナル」「インターナショナル」「グローバル」「トランスナショナル」の4つのタイプ通りがあると言われております。本社と子会社、子会社同士がネットワークで繋がっている世界、それが「トランスナショナル」タイプです。本社からの一方的主導ではなく、多様で多拠点的なイノベーションの創出と共有を目指す、戦略的なキーワードである「トランスナショナル」を研究所の名前に使わせていただきしました。受託研究等の研究成果のフィードバックを行い、また、年に6回のセミナーを11年続けてきています。その他にも様々なテーマについてのセミナーや研究会を実施しております。現在、約45社・約130人の個人会員が集まっている組織となっています。

(注1)本研究プロジェクトは、文部科学省「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プロジェクト」の1つとして2008年夏に選定され2010年月末まで継続した「海外経営専門職人財養成プログラム早稲田大学コンソーシアム」(英語名称:Global Management Program for Japanese Leaders. 略称:G-Map)のことである。研究成果の1つとして、白木三秀編著『グローバル・マネジャーの育成と評価』(2014年、早稲田大学出版部)がある。

(注2)Bartlett, Christopher A. and Sumantra Ghoshal (1989), Managing Across Borders: The Transnational Solution, Harvard Business School Press. (バートレット&ゴシャール著、吉原英樹監訳『地球市場時代の企業戦略:トランスナショナル・マネジメントの構築』日本経済新聞社、1990年)。

林 幸弘

私自身が早稲田大学在学中に白木先生のゼミに所属しており、そのご縁もあって、今も白木先生から学ばせていただいている次第です。私がリンクグローバルソリューションに在籍していた頃から、白木先生にはセミナー等で講演をいただいたり、接点を持たせていただいていました。モチベーションエンジニアリング研究所も大手企業の企業人事の方々との勉強会のコミュニティを持っていまして、トランスナショナル研究所と交流できないかと模索している中で、「京都にゆかりのある企業」というカテゴリーの中で連携できないかという話になりました。

白木 三秀
白木

トランスナショナル研究所のセミナーは、コロナ前は「基本的に対面でのセミナー」かつ「東京での実施」で進めておりましたので、「オンライン」で「東京以外の企業の方々と」というのは、非常に興味深い施策だと感じました。

林 幸弘

当初は「グローバルHR会」という名前だったのですが、白木先生から「あえて拡散せずにカテゴリーを絞りましょう」というお話をいただき、「京都会」というコミュニティとして進めていくことになりました。今回お話いただく村田製作所をはじめ、合計6社にご参加いただいています。日本が世界に誇る京都企業の、目に見えない潜在的な強みの源泉に迫りたい、というのが京都会のテーマです。

白木 三秀
白木

京都という街の地域性や、京都企業で働く人が持つ会社への思い入れ、やはりユニークな特徴がありそうですよね。

林 幸弘

そうですね。伝統と革新の両面の魅力がある街ですよね。白木先生が、『英語de人事』という書籍を書かれていて、そのテーマに沿って各企業が事例を紹介し、ディスカッションをするという形式で学びを深めています。今回は京都会でも共有いただいた村田製作所の事例を、中島さんから共有いただき、白木先生からご質問や解説をいただく形で進めて参りたいと思います。

中島 彰
中島

はい。よろしくお願い致します。村田製作所の中島と申します。2010年に新卒で総合電機メーカーに入社し、人事の仕事をしておりました。2017年から村田製作所に転職し、人事部の中で採用やグローバル企画の仕事を担当し、2020年からはデータソリューション企画開発課という部署でHR テックに関わる仕事をしています。今回は2019年、人事部グローバル企画課で取り組んだ「グローバル報酬ガイドラインの策定」についてお話させていただきます。いつもの京都会は、オンラインで夜にざっくばらんにやらせていただくので、今日は少し緊張しますね(笑)。

林 幸弘

そうですね(笑)。いつもとは少し毛色の違う会になっておりますが、ぜひ普段どおりお願いします。

村田製作所の「グローバル報酬ガイドライン」

中島 彰
中島

はじめに簡単に村田製作所(以下、ムラタ)について紹介致します。総合電子部品メーカーということで、コンデンサやセンサを開発・製造・販売している会社です。近年、企業規模が大きくなってきておりまして、売上も従業員数も伸びています。特に、M&Aで海外・国内の企業が増えているというのが特徴です。もともとは、京都で陶磁器を作っていた工場でした。創業者の村田昭氏が、陶磁器を焼く技術を応用して、電子部品を作り始めたのが、ムラタの起こりです。海外拠点も多く、特に近年のM&Aによって急速に増えたということもあり、これまで「阿吽の呼吸」で伝わってきたことも、なかなか一様には伝わりにくくなってきたという背景があります。報酬に関わる課題としては「報酬設計に関する明文化された拠りどころがない」「M&Aによってグループ内でも報酬に対する異なる考え方・体系を持つ会社の増加」「適切なベンチマーク不足による人材流出」などがありました。

林 幸弘

ありがとうございます。白木先生、こういった課題というのはグローバル企業においては一般的なものなのでしょうか?

白木 三秀
白木

そうですね。「M&Aによって本社社長よりも給与が高い人がいる」というのは、よくある話ですね。「適切なベンチマーク不足」によって、人材が辞めてしまう・止められないというのは、十分に有り得る話ですね。典型的と言えば典型的ですが、非常に幅広くいくつもの問題が、同時にたくさん起きている。それがこのケースの特徴かもしれませんね。

中島 彰
中島

そうですね。本当に課題が山積しているという状況でした(笑)。

林 幸弘

そんな中、どんなことに取り組まれたのでしょうか?

中島 彰
中島

大まかに言うと2つですね。

①「グローバル報酬ガイドライン」
②「OSA報酬ポリシー」

というものを策定しました。①はムラタとしての報酬に対する基本的な考え方を明文化したもの。②のOSAとは海外拠点のことです。OSAとしての報酬に対する考え方、水準、決定プロセスなどを明文化したものです。①がフィロソフィーというか考え方、②がより具体的なものという位置づけです。

林 幸弘

今回は①「グローバル報酬ガイドライン」についてお話しいただけるということで。

中島 彰
中島

はい。「グローバル報酬ガイドライン」については、大きく2つの方針を定めました。「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」そして「人材の獲得・維持」です。方針を定めるにあたり、経営陣に「ムラタがこれまで大切にしてきた報酬・評価に対する考え方」をインタビューしました。「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」というのは、例えば「年功序列」であるとか「新卒一括採用」という文脈でネガティブなイメージをもたれることもあることかと思います。

林 幸弘

そうですね。一般的に日本の大企業の古い文化として取り上げられることが多いですね。

中島 彰
中島

いろいろと議論を重ねていく上で、「ムラタとして大切だ」ということで「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」ということを明文化しました。なぜ大事か、ということについて議論を深めていくと、辿り着いたのは「ビジネスモデル」でした。主力のコンデンサという製品は、独自のノウハウで作り上げられる非常に特殊な製品です。他社からすると、最終製品としてのコンデンサを手にとって見ることはできても、何をどうやって作れば、これができあがるのかということは解明ができないものです。そのおかげで、他国の企業から真似されず、シェアを高く保ち、価格を維持できています。技術力が競争力の源泉になっているので、「人が時間をかけて習熟度を上げていく」ことが重要であり「人が辞めてしまうことは情報流出のリスクに繋がる」ということです。「長く働いてもらう」ということが、報酬・評価のポリシーとして最も大事なことであるということが再確認されました。その上で「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」には4つの項目を定めています。「成果とプロセスの重視」「チームと組織への貢献」「人材への投資」「公正さ」の4つです。

林 幸弘

なるほど、詳しくお聞かせ下さい。

「グローバル報酬ガイドライン」にこめられたムラタの経営哲学

中島 彰
中島

「成果とプロセスの重視」について

中長期的な成長を目指しているので、短期的な結果に囚われて無茶なプロセスを踏んでしまうと、結果的に長期的な成長に繋がらない。ですので、短期的には小さな成果でもいいので、中長期的に発展できるプロセスを選びましょう、という考え方です。

「チームと組織への貢献」について

「一人で成せることは小さい」という考え方に基づいています。アメリカで買収した会社の中には、ずば抜けた成果を出すプレイヤーもいたのですが、チームで成果を出すという意識が低い人でした。当然個人の能力ということも大切ではあるのですが、その人に飛び抜けて多くの報酬を与えるよりも、チームを巻き込んで成果を出せる人をより高く評価していこうという方針になりました。

「人材への投資」について

ムラタというのは、表現が難しいですが、節制を心がける会社です。ただ、成長・キャリアアップ・育成という分野においては、惜しまずお金を出すという特徴があります。育成に投資をすれば、必ず会社の成長に繋がっていくという実感を、経営陣みんなが持っているということをインタビューの中で感じました。直接的・短期的な金銭報酬ではなく、育成への投資をすることで、キャリアアップしてもらい、結果的に金銭報酬だけでなく更に高いステージでの仕事のやりがいを得てほしい、という考えです。

「公正さ」について

コンデンサという製品は一人のスーパースターが作るものではなく、たくさんの人が関わって作り上げていくものです。当然関わり方や貢献には違いがありますが、「公正」という判断に照らして、違いに「説明がつくこと」を重視しています。

この4つが「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」に繋がると考えています。ムラタにとって「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」が最も大切なことなのですが、「人材の獲得・維持」については一部例外を認めます、ということで2つの項目を設定しています。「市場競争力の確保」と「事業ニーズへのフレキシブルな対応」です。

「市場競争力の確保」

課題としてあった「適切なベンチマークの不足」に関わることです。労働市場も常に変化をしていきますので、事業成長に必要な人材を獲得するにあたり、低すぎず、高すぎず、リーズナブルな報酬水準を維持しましょう、という考え方です。給与という形だけでなく、その他の福利厚生も含めて、適切な報酬水準を設定することを目指しています。

「事業ニーズへのフレキシブルな対応」

一番例外的な部分なのですが、国・地域・業界・職種・ポジションなどの特性を踏まえて、公正さの範囲の中で、フレキシブルな対応を可能とする、と定めています。例えばアメリカ西海岸の半導体市場など、非常に特殊な条件においては、条件を明確にしていれば特例を認めます、というものです。ガイドラインは守りながらも「例外的な対応」(特別な人に特別な処遇をおこなう)の必要性が今後ますます増えていきますね。

林 幸弘

ありがとうございます。白木先生、特に印象に残ったお話などございますか?

白木 三秀
白木

「人材への投資」を大切にされているのは印象的ですね。私も、1990年代、昔インドに訪問した時に面白い会社と出会いました。インドのソフトウェアの会社なのですが、入社して3年間は給与を意図的に安くしている、と社長が話していました。「その代わり、面白い仕事をさせている」とのことでした。3年間残った人は、ぐっと給料が上がるような制度にしていました。給与をおさえることで「仕事そのものが好きな人かどうかを見ている」のです。「でも事前に説明しておかないと辞めてしまうんじゃないですか?」と質問したら、「お金への執着が強い人は、辞めてもらっていいんだ。金融業界とかに行った方がいい」という答えでしたね。

また、別のインドの日系会社で「全国レベルの有名大学から採用しても定着しない」という状況だったけれど、仕事の中身を考えると飛び抜けて優秀である必要がない業務内容だった。そこで、地元の大学からの採用に切り替えたら、しっかりと定着して、きちんと利益が出た、という話もありました。村田製作所とは逆の話かもしれませんが、ビジネスモデルにあった組織やHRMのつくり方をしなければいけない、というのは万国共通の話だと感じました。

林 幸弘

人材への教育投資というのは、会社ごとの特徴が出ますよね。村田製作所のお話を聞くと、人材への教育投資が成長に繋がる、ということについて経営陣の中でコンセンサスがしっかりとれていることが印象的ですね。

中島 彰
中島

そうですね。教育への投資についての考え方は、経営陣みんなが同じ思いを持っていると感じました。白木先生が話してくださった「お金への執着よりもやりがいを大事にしてくれる人」というエピソードも、に当てはまるお話だと思います。お金は非常に大切ですが、仕事のやりがいを大切にしている人に働いてほしいという思いは、経営陣は強く持っていると思います。

白木 三秀
白木

アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグの理論でも言われています。遜色ない給与であればモチベーションを上げる要因は給与ではない、ということは1950年代から語られていますね。

海外拠点を支える「ムラタの人」

林 幸弘

改めて、大きな企業でこういうポリシーを決めていくというのは、非常に難易度の高い仕事だと思うのですが、中島さんが進めていく上でご苦労されたことはなかったですか?

中島 彰
中島

もちろん簡単ではなかったです。ただ、今回インタビューした経営陣が、本当に一枚岩と言いますか、同じフィロソフィーを根っこに持っていることを感じました。これだけ事業領域も広がっていく中で、フィロソフィーという部分において、息を合わせたように、同じ方向を向いていることには驚きました。

林 幸弘

それは本当にすごいですね。

中島 彰
中島

実際にこの「グローバル報酬ガイドライン」のアウトプットを見てもらっても、「そうだね」「その通り、知っていたよ」というリアクションでした(笑)。

林 幸弘

まさに「明文化」であり。思いとしては共通していたものを、言葉にしていくプロセスだったんですね。

中島 彰
中島

そうなのだと思います。ぼんやりと共通して持っていた思いを言葉にしたという感じでした。ただ、これが海外の会社に伝える上では、非常に役立ちました。英語にも訳し、海外の会社・拠点に展開していきました。

林 幸弘

次のプロセスですね。明文化したものを、海外拠点に伝えていく。

中島 彰
中島

はい。海外のあらゆる拠点に、このグローバル報酬ガイドラインを説明し、「どうですか?」「率直に意見を聞かせてください」と伝えました。

林 幸弘

海外拠点から反発もあるかもしれない、なかなか緊張感の高いフェーズだと思いますが、直球勝負ですね!

中島 彰
中島

そうですね(笑)。続々とリアクションが返ってきたのですが、「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」ということについて、圧倒的多数の拠点が共感してくれました。むしろ「言わずとも、そうしている」というリアクションで、逆に私の方が拍子抜けしてしまう程でした。一部の会社は、「短期的な雇用で高い報酬も」という例外的なポリシーで運用していましたが、ほとんどの会社が「社員と会社の中長期的かつ持続的な成長」を支持し、そのように報酬制度を運用していました。古くからムラタにいる人は、あまり驚いていませんでしたが、私は入社して3年程でしたので、衝撃を受けました。海外拠点にまで、これほどフィロソフィーが浸透しているということは、普通のことではないと感じました。

林 幸弘

そうですね。普通のことではないと、私も感じます。

中島 彰
中島

オランダやシンガポールに出張に行ったりすると、現地のHRの人から英語で「ムラタっていうのはな」と私が教えられるような状況です。こうやって明文化する前から、海外拠点にまでムラタのフィロソフィーが浸透していることを実感しました。

林 幸弘

海外の人が「ムラタとは」を語っているのは、やっぱりすごいですね。

中島 彰
中島

「ムラタらしい」という言葉は、社内でも使われている気がしますね。オランダの人に対しても、アメリカの人に対しても、中国の人に対しても、「あの人ってムラタらしいね」と言うことがあります。世界各国に「ムラタ」を体現する人がいて、彼ら彼女らが「ムラタ」を体現して伝えてくれているという実感がありますね。海外法人のトップを任される人は、やっぱり「ムラタらしい人」ですね。実務能力はもちろんのこと、フィロソフィーを体現できる「ムラタらしい人」が就任しているという印象があります。

白木 三秀
白木

今の「ムラタ」の経営陣の方々が、創業者から受け継いできたものを、登用・報酬・評価にも受け継いでいっているんでしょうね。

中島 彰
中島

人から人へとムラタのDNAが伝承されていると感じますね。

林 幸弘

それが国を超えて伝承されているというのがすごいですね。

中島 彰
中島

私にとってもカルチャーショックでしたね。アメリカ人・オランダ人である前に「ムラタの人」なんですよね。「日本語がしゃべれないムラタの人」です。私の方が「ムラタとは」ということについて教わることが多いです。

「Sincerity」というムラタらしさ

林 幸弘

改めて「ムラタらしさ」とはどういうことなんでしょう?

中島 彰
中島

私たちは「Sincerity」と呼んでいるのですが、「誠実さ」や「純朴さ」です。お金ではなくて義理や人情ややりがいで心を動かされたり、派手さはないけれど、研究者気質でギークなところがあったりとか。まだ私の中でも「ムラタの人」が明文化できていないですけれど、そんな印象を持っています。

林 幸弘

人が人に伝承してきたというお話もありますが、村田製作所のビジネスモデルや仕事が、「ムラタらしさ」を形づくっていった部分もあるんでしょうね。

中島 彰
中島

そうですね。コンデンサという製品の作り方が、ムラタの在り方に大きな影響を与えていると思います。一人では作れず、工程をバトンタッチしながら作り、時間もかかる。その中で力を合わせ、円滑に進むような繋がり方を大切にしてきた。作り方・在り方を海外に移管して、時間をかけて「ムラタらしさ」が育まれていったのだと思います。

林 幸弘

組織として強いですよね。ブレない。

中島 彰
中島

外部環境の変化があっても、ムラタらしさはブレないなと思います。

WORKとは「労働」だけではなく「作品」創り

林 幸弘

海外の人たちも、ムラタの仕事の本質的なやりがい・楽しさに共感しているんでしょうね。中島さん、ありがとうございました。白木先生、最後に日本でグローバルHRを担う皆さんへのメッセージをいただけますでしょうか。

白木 三秀
白木

やはり、HRプロフェッショナルの役割の一つは、事業のパフォーマンスに関連付ける、ビジネスに関連付けるということですが、もう一つの重要な役割は、働いている人たちに「イキイキと働ける組織」「働きがいのある組織」を提供するということですね。その両方が大切です。そして、今回の THE MEANING OF WORKということですが、まさにWORKという意味が大切ですね。WORKというのは労働という意味もありますが、「生きがいのある働き方」というクリエイティブな意味が含まれています。WORKは作品です。クリエイティブなものがWORKなのです。常によりよいものを目指していくという姿勢が大切です。現状に満足することなく、広い視野でよいものを取り入れて、変化し続けることがHRプロフェッショナルに求められることだと思います。

この京都会も、互いに切磋琢磨して、よりよいものを創り上げていきたいですね。古いものに固執しない。事例を共有したり、勉強したりでおわりではない。ベストプラクティスをもらおうとするのではなく、プラクティスを学んだ上でベストフィットを目指すべきです。ベストプラクティスはあくまで他のところでベストなだけで、自分の組織においてフィットするものは、自分で考え創り上げていかなければいけない。そう思います。

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