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「会計思考」で会社を変え、仕事を変え、自分を変える!|「理論」と「実践」の接続|Link and Motivation Inc.
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「会計思考」で会社を変え、仕事を変え、自分を変える!

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  • 安本 隆晴

    安本 隆晴TAKAHARU YASUMOTO
    安本公認会計士事務所 所長

    公認会計士。経営コンサルタント。(株)FRONTEO、ファーストアカウンティング(株)、(株)ベター・プレイスの社外監査役。「未来経営塾」塾長。1954年静岡生まれ。1976年、早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現 有限責任あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年、(株)ファーストリテイリング(旧・小群商事)社長の柳井正氏と出会い、以降、監査役として、同社の成長とともに30年間歩んできた。アスクル(株)、(株)リンク・セオリー・ジャパン、UTグループ(株)などの社外監査役を歴任した。2013年3月まで6年間にわたり中央大学専門職大学院国際会計研究科特任教授を務めた。2014年5月より若手経営者向け勉強会「未来経営塾」を主宰している。著書に『新入社員から社長まで ビジネスにいちばん使える会計の本』『強い会社をつくる会計の教科書』『伸びる会社をつくる起業の教科書』『ユニクロ!監査役実録』『ビジネスの世界で生き残るための現場の会計思考』ほか多数。柳井正著『一勝九敗』『成功は一日で捨て去れ』の編集にも携わった。

日々のビジネスの中で、組織全体の数字を意識して仕事をしている人がどれだけいるだろうか。会計とは、お金を数えるだけの行為でもなければ、会社を支える裏方の仕事でもない。ユニクロが成し遂げた飛躍的な成長を会計面から支えた安本隆晴氏に、経営とビジネスを劇的に変える「会計思考」について伺うとともに、未来の経営者たちへのメッセージをいただいた。

ユニクロとの物語は一本の電話から始まった。

ユニクロとの物語は一本の電話から始まった。

「当社社長が安本様の著書を読んで感動したそうです。どうしても会いたいと言うので、山口までお越しいただけませんか」。「ユニクロ」との出合いは、一本の電話がきっかけでした。監査法人から独立し、経営コンサルティング会社を設立したばかりの私は、お客さまを集めるために『熱闘「株式公開」』を出版していたのですが、それを読んでくれた柳井社長が感銘を受けたというのです。

僕が初めて訪れた1990年当初、(株)ファーストリテイリングは小郡商事(株)という社名で、山口県宇部市に本社を置き、オーダースーツなどの重衣料店を含む洋服店10数店舗を展開する会社でした。社長室に案内されて目についたのは、ビジネスや経営に関する書籍がずらりと並ぶ本棚。聞けば、国内外を問わず、さまざまな書籍を読みあさっているのだというから驚きました。その勉強熱心で情熱にあふれた経営者が、海外のアパレルブランドに押されている現状に危機感を抱き、「なんとかしたい」とまっすぐに想いをぶつけてきたのです。私は、特に大きな志を持っているわけではありませんでしたが、彼の熱に心を揺さぶられたような感覚を覚え、ともにチャレンジしていくことを決意しました。

ファーストリテイリングでは、1990年9月から1993年11月までは経営コンサルタントとして、その後、2020年11月までの27年間は社外監査役として関わってきました。最初に手がけたのは会社の基盤づくりです。具体的には、組織と業務分掌づくり、各部門の標準作業整備、社内規程やマニュアルの整備と運用、関係会社の整備、出店計画と資金繰り管理、内部統制整備と運用、資本政策などを整備することに奮闘努力しました。社員の皆さんの協力のもとでつくり出した社内ルールは、ざっと200近くになると思います。

ユニクロ急成長の陰に「会計思考」あり。

ユニクロ急成長の陰に「会計思考」あり。

小郡商事は1991年9月より、社名をファーストリテイリングに変え、店舗もすべて「ユニクロ」に統一しました。それから毎年30店舗ずつ出店を増やし、90店舗になった時点、つまり1993年8月期の決算をもとに上場申請し、1994年7月に広島証券取引所に上場することになります。

ただし、初めから順調だったわけではなく、最初は経理や財務担当者がまったくいない状態で苦労しました。「ユニクロ」のビジネスモデルは、海外に委託生産した商品を買い、それを売るというシンプルなもの。それだけを考えると資金繰りもそう難しくないように思えますが、当時は恐ろしいほどのスピードで店舗を拡大していましたから。入ったお金のほとんどを成長のための投資に使う。一つ間違えば、会社の経営が危機的な状況に陥りかねません。当時は、さまざまな経験をし、多くのことを学びました。ダイワハウスの流通事業本部に店舗開発の協力依頼をしに行ったり、農協(JA)を介して、農家の方に「土地を貸してほしい」とお願いしてもらったりしたことも、忘れられない貴重な体験の一つとなっています。

掲げた目標の実現に向けて、突き進んでいく。柳井社長の志とパワーはとにかくものすごいものでした。当初は十数店舗しかない状況で、店長を任せられる人材も十数名程度。「本当にそれだけのスピードでお店を拡大できるのか」と社員たちも半信半疑の状態でした。しかし、いつの間にか柳井社長の勢いに乗せられてしまうんですよね。私自身も、その目標を実現すべく、夢中になって毎日を過ごしていた気がします。

また、柳井社長は勉強家で、会社経営の重要事項をこちらから指摘するだけですぐに理解し回答してくれましたし、スピード感を持って改善・実行し、試行錯誤も素早かったです。会社の「会計思考」を大きく向上させる転機となったのは、経営幹部の方々とともに7名ほど面接し、私との窓口になってくれる人を選んだこと。その役割を担うことになったのは、情報管理部長として社内の情報システムを取りまとめていた菅さんでした。最初にお会いした時に、「この人に複式簿記を覚えてもらい、経営の中核を担ってもらうと同時に、会計思考の中枢になってもらおう」と思い、30分ほどかけて複式簿記のイロハを伝授したのです。決算書がどんなふうに出来上がるのか、貸借対照表と損益計算書とのつながり、どの会計科目が重要なのかについて、私が思ったとおり即座に理解してくれました。その後、菅さんはNo.2のポジション、専務取締役になり活躍しましたが、残念ながら体調不良で1999年に退社されました。しかし、その想いは、「会計思考」を備えた若き人材に受け継がれ、経理財務や管理部門として、会社の屋台骨を支えています。

私が関わった30年間で、売上高は40億円から2兆88億円と502倍に、経常利益は4千万円から1,493億円と3,732倍になりました。急成長の陰で、数々の失敗を重ね、厳しい壁をいくつも乗り越えてきたことは言うまでもありません。すぐそばで見て、伴走しているだけでも現実の迫力とスリル・怖さを常に感じ、相当な勉強をさせていただいたと思います。ユニクロが生み出した「フリース」が社会現象とも言える大ヒットを記録した時の感動は、今でも忘れることができません。

複式簿記を学ぶことでビジネスの視界が変わる。

複式簿記を学ぶことでビジネスの視界が変わる。

先ほど「ユニクロ創成期に、No.2に複式簿記の何たるかを覚えてもらった」という話をしました。簿記を知らずに決算書の基本や経営分析を勉強するよりも、どのように決算書が出来上がるのかを複式簿記の基礎を学んでからのほうが、経営の成績表である決算書の内容や、経営目標や課題解決など、どこに気をつけるべきか示唆を与えてくれる経営分析のやり方の意味がよく理解できるようになると思います。

もともと複式簿記は、イタリアの修道士でもあり数学者でもあるルカ・パチョーリが1494年に著した『スムマ』という数学書に由来しています。彼が発明した技術論ではなく、それまでイタリア商人の経営実務で行われてきた帳簿記入の技術・方法を学術的に整理して解説しているものなのですが、世界中に広まって、現在ではほとんどの国で、帳簿に記入し決算書をつくる方法として一般的に使われています。

複式簿記は、1つの会計上の取引を2つの側面に分解して帳簿に記入する方法です。1つの取引を2つの形に分解、もしくは2つの視点から捉えることから「複式」という名称がつきました。例えば、「客先に行くために180円支払って電車に乗った」という1つの取引は、「旅費交通費という費用が180円発生した」という取引と、「支払いのため現金が180円減少した」という取引の2つの側面に分解されます。それは、「旅費交通費」という勘定科目の増加と、「現金預金」という勘定科目の減少という形で、それぞれの勘定科目の元帳に記入されます。現在では、実際に紙の帳簿に記入することはなく、パソコンソフトの仕訳画面上で左側(借方)に「旅費交通費180円」、右側(貸方)に「現金預金180円」と入力すれば、それぞれの勘定科目の帳簿に記入(転記)されたことになります。この仕訳さえできれば、月末には月次試算表が、決算期末には決算書が自動的に出来上がる仕組みになっています。

決算書を読めるようになるための目的は3つあります。1つ目は、「決算書は経営者のための成績表」だということ。2つ目は、社員や取引先などの関係者にとって、「この会社はつぶれる心配はないか、ちゃんと儲かっているか、信用できるか、成長していきそうかを判断する資料」であること。そして3つ目は、「上場企業の株式投資をするための参考資料」であるということです。決算書を形づくるための複式簿記ですが、入門編として、日本商工会議所主催の複式簿記検定3級という検定試験があります。この勉強を通じて複式簿記に触れることによって、決算書の何たるか、各勘定科目のつながり、過年度の決算書と直近の決算書の比較を通じて「この会社はどう成長したのか、しなかったのか」「どこが財務的に弱点なのか、強みなのか」などを理解できるようになります。大手商社をはじめ、新入社員研修で、この簿記3級検定を必修にしている会社もよく耳にします。「よくわからないから」と放っておかず、ぜひ真正面からチャレンジしてみてください。それによって、日々の仕事や経営に対する視野が大きく開かれることは間違いありません。

「会計思考」はビジネスを可視化する。

「会計思考」はビジネスを可視化する。

「あの人はよくできる」といわれるビジネスパーソンは、他人から信用される数字力とロジックを駆使して、他人に説明できる能力を身につけています。特に数字力のほうは、ビジネスの現場では会計に関連した数字を多用することが求められるし、そのほうがより説得力が増します。ここで「会計」という言葉を少し掘り下げてみましょう。

「会計」というのは「account(ing)」という英単語を和訳したもので、もともとは「他人に説明する(account for)」という意味を持っています。何かの目的に向かって行動したり、投資したり、意思決定した結果、それらをまとめて会計の用語を使って整理したもの、つまり「決算」した内容を投資家に報告することが会計の基本になっています。「Accounting」とは、報告する相手を納得させるための方法でもあると言えるのです。

「会計思考」の定義とは、企業間競争に勝つために「利益」を生み出すと同時に、「お金」を残すために会計数字を使って思考する方法のことです。それは、PDCAを回す時に行動のモノサシとなる考え方で、「損益構造」と「キャッシュ・フロー構造」の両者を理解し、利益と現金を同時に増やすにはどうすればよいかを考えて行動することに通じます。例えば、営業の実務で、1つの商品を売り上げて「儲かった!」(損益構造上は利益が出たのでOK!)と喜んでいても、事前に(例えば2カ月前に)支払って仕入れた商品を3カ月後に売掛金の入金(回収)をしたのでは、キャッシュ・フロー(現金の収支)構造上は5カ月間お金が入ってこないことになり、あまり良い取引とは言えません。できれば、売掛金ではなく前金で入金していただけるのが最良の取引であり、回収条件はなるべく早期に、というのがビジネスの原則です。この辺の考え方をすべての社員がマスターしていれば、自身の行動が変わるし、そのことを通じて会社全体の動きも変わってきます。

PDCAを回す時には「会計思考」で、計画を立て、実行し、計画と実績の差を分析、その後のアクションに活かし、また計画する。それぞれの行動が「どの程度儲かるのか」と「現金がいつ、いくら、支出され、入金するのか」という疑問を抱きつつ、いろいろな選択肢の中から常に有利なものを選ぶことになります。それによって、生産性が高まることにもなるでしょう。

「会計思考」を持てば、社員は「経営者」に変わる。

「会計思考」を持てば、社員は「経営者」に変わる。

全社員が会計思考を持って行動するということは、一人ひとりが自立・自律した「自分株式会社の経営者」になるということでもあります。会社の構成員でもある社員が経営者の視点で自分株式会社の経営成績を良くするように働き、日々、生産性を上げる改善努力をしながら行動する。それが、私が理想とする会社像です。

言いたいことはこれだけではありません。すべての社員が会計思考を持つようになれば、社内のすべての現場で会計上の問題点はほぼなくなり、どんな大企業でも経理・財務の担当者が必要最小限の人数で足りるようになります。具体例を挙げると、商品の販売可能性を慎重に考えながら仕入れることで、商品の製造につきものである不良在庫や滞留在庫はほぼなくなります。営業部門では、信用度の低い得意先には販売しないので貸し倒れは起きなくなるし、請求書の発行も締め日の後、遅れることなく速やかに行われます。外注管理部門では、単価契約を結ぶ前に仕事を請け負わせて、月末までに仕事が終わったのに請求書が受領できないといったこともなくなります。また、現場での交通費や接待交際費の領収書の経理部門への回収締め日はきっちりと守られ、売上や仕入れで得意先・仕入れ先との違算はほぼなくなり、社内で稟議書を回すスピードは格段に上がり、月次決算書は翌月5日以内には完成し、予算と比較分析して経営の舵取り役に寄与することになります。

当たり前のことが、当たり前に実行される。そんな会社を実現するためにも、経営トップが旗を振り、経理財務部門の方々が先頭に立って、全社員に会計思考を持ってもらうための運動を起こしてほしいものですね。

数字は”絶対神”ではない。「制約思考」から「提案思考」へ。

数字は”絶対神”ではない。「制約思考」から「提案思考」へ。

客観的に評価しやすいことから、ノルマやKPIのように、行動の進捗度や営業成績を会計と同じように数字で表すことは一般的によく行われています。ただ、その場合、上司から部下へトップダウン方式で「達成しなければならない数字」として示されると、その数字にいつも追いかけられているようで精神的につらくなってしまいますよね。

数字は”絶対神”であってはならないし、数字に追いかけ回される生活を送るのだけは避けたいところです。KPIを自分の友人・相談相手となるように設定する、あるいは設定し直すことが望ましいと思います。そのためには、数字を嫌いのまま放置しないことです。第一、効率的ではありません。逆に、積極的に数字を好きになろうとやってみれば、案外、好きになれますし、徐々に友人であり相談相手のように感じてくるものです。ですから、数字は”絶対神”ではなく、あくまで自分の伴走者、目的攻略のための行動の目安であり、一里塚。そのように考え方を変えてみてください。考え方を変えるのはお金がかからず、タダでできますし、絶対に損はないと思います。

この考え方は、数字だけにとどまるものではありません。多くのビジネスパーソンが普段から、社内のルールや法則、過去の実例、経験に縛られて、「~すべき」とか「~ねばならない」と考えながら仕事をしているように感じます。

自分の仕事を通して、PDCAを回しながら仕事をすると効率が良くなり、生産性が上がるという経験をした方は多いと思いますが、P(Plan:計画)の段階であまりにルールや経験則に縛られると、自由で柔軟な発想ができなくて計画そのものが小さくまとまり、実行した結果も「なんだこんなものか」と努力したわりには達成感がなく、後悔することにもなりかねません。過去の事例や経験、社内ルールなどのあらゆる制約を取り払って、正しい倫理観に基づいて自由に発想し、ありとあらゆることに疑問を抱き、抱いた疑問をもとにいろいろなことを提案したり、チャレンジしたりするようにしたら、思い描いたより何倍もの成果が得られて、積極的で楽しいビジネスライフが送れるようになるはずです。

優れた経営者の共通点とは何か。

優れた経営者の共通点とは何か。

私はこれまでのキャリアの中で、ファーストリテイリングの柳井社長や、アスクルの岩田社長(2019年退任)※をはじめ、上場を果たした数々の経営者との親交や支援を通じて、「成長し、成功する企業の経営者とはいったいどんな人なのか」「どんな振る舞いをしたから社員がついてきたのか」という参考事例をいくつも収集できました。ここからは、優れた経営者としての共通点や成功要因を挙げていきます。

まずは、誠実、公平・公正に振舞う、表裏がない、強烈なリーダーシップなどの一般的なリーダーシップ像に加えて、「独立自尊の(だれにも頼らない)商売人」であり、高い志と目標、そして明確なビジョンを持ち、それを社員にも共有している。それから、「自分自身を客観視できる」ことも重要な要素です。

次に、何らかのコンプレックスを持っている、というのも共通点です。つまり、それだけ負けん気が強く、それが事業推進にとって原動力にもなっています。多少の失敗にもめげない、諦めない粘り強さも重要な資質です。また、会計思考力を持つと同時に、社内外の経営参謀をうまく使えることも共通点だと言えます。

実際に、これらをすべて満たすような経営者は存在しません。しかし、どの要素についても、少しでも近づくように努力したり、社員の前でそのように振舞ったりすることはできると思います。また、多くの知識人と接したり、古今東西のあらゆる分野の良書を読んだり、さまざまな分野の芸術を堪能・吸収し人間力を高めたりするのも、社員に尊敬され、影響力を高めることにつながります。

今述べたことは、経営者でなくても、ビジネスをするうえで重要な要素でもあります。多くのビジネスパーソンにとって、何らかの参考や刺激、変わるきっかけになるのではないでしょうか。「明日からはこんなふうに振舞ってみよう」「人間力を高めるように努力してみよう」などと考えてくれたら、うれしく思います。

※岩田彰一郎氏(現在は(株)フォース・マーケティングアンドマネージメント 代表取締役CEO)

「未来経営塾」は化学反応の場。

「未来経営塾」は化学反応の場。

経営者は、常に孤独です。親身になって経営課題を相談する相手や、問題を指摘してくれる人もいません。社員に弱音は吐けないし、弱気な姿は見せられません。既存の経営塾や社会人向けの大学院、MBAは、他社の成功事例など他社事例を学ぶところであり、自社の経営課題解決に直接的に役立つものではないのです。

そこで、10年ほど前に立ち上げたのが「未来経営塾」。私自らが経営のあらゆる分野の講義を行っています。それぞれが項目分野ごとの課題レポートを発表して自社の経営課題をさらけ出し、多様な業種・業態の同世代の経営者への質疑応答を通じて解決策のヒントをもらい、気づき、すぐに変革と改善を実行することによって経営の実効性が上がる、そんな場所をつくりたかったのです。

塾生たちはこの「未来経営塾」で大いに学び、自社の経営課題をさらけ出し、遠慮のない質疑応答を通じて塾生同士互いに化学反応を起こし、一生の友人を得ることになります。この経営塾を10年間続け、2024年9月で10期生を卒業させ、累計で90名ほどの卒塾生を送り出すことができました。

その中から3社がすでに上場を果たし、現在、5社ほどが上場準備に入っています。私は講義の中で「上場すべきだ」と言ったことはありません。しかし、「いつでも上場できるくらいの強くて伸びる会社を目指そう」とは言いました。塾生たちの成長をそばで見守れるのは何よりもうれしいことでしたし、彼らの存在を心から頼もしく感じています。

未来の経営者たちへ。限界を決めてはいけない。

未来の経営者たちへ。限界を決めてはいけない。

「未来経営塾」の塾生を指導してきて、強く感じたことが2つあります。一つは、会社の将来のありたい姿を決めていない経営者が多いこと。そして、全体的に最終目標の規模が小さいことです。会社経営は、最終的に会社の進む方向を決めること、会社の具体的な将来像を決めることが大事です。社会を変えるような大きな志やビジョンを抱いてほしいと思っているのですが、そんな経営者はなかなかいません。まずは、単なる希望や夢でもよいので、社員は何人で拠点はいくつ、売上高は数十億円、数百億円で経常利益率は10%、10年後、20年後にはお客さまや社会の役に立つ会社になっていたい、などと考えてみること。そして、その時の未来組織図を描いてみることです。その未来組織図と現在の状況との差異をどうやって埋めていくのか、詳細に計画し、あらゆる角度から準備を進め、行動してみるのです。思い巡らしたことは必ず実現できます。実現できるまで、思い続け、実行してみることが大切なのです。目標を達成することを毎日習慣化するくらい考え続けなければ、目標達成はかなわないということでもあります。もし、目標達成の姿が思い描けないとするならば、思考する量がまだまだ足りていないのだと思います。

もう一つは、普通の人間でもありがちなことですが、人間は黙っているとサボろう、怠けようとするものです。「未来経営塾」の塾生のほとんどは起業家・創業者ですが、「年商が100億円になったら成功だ」と満足しているようではダメ、自らの限界を決めるべきではありません。行きつくところまで行くこと、決して自己満足しないこと。衰退は満足した瞬間から始まるのです。

塾生たちを見ていると、潜在能力は高いのに、いつも余力がありそうで非常にもったいないと思わされたものです。目標を高く持つことができれば、遊んでいるヒマなどなくなります。大目標に達するための小目標が一つ達成できると、次の目標達成が楽しみになりますし、そのたびに違う自分を発見できるようにもなります。どんな経営者も、人生のうち何度かは「狂ったように仕事をする時」がやってきます。その期を逃さず、全力で精一杯、そして全社員を巻き込んで努力し続けてほしいと思います。もちろん、全社員から尊敬され愛されるような経営者になっていないと、誰もそんなものに巻き込まれたくありませんし、ついていこうともしないでしょう。経営者には、それだけの人間力が求められるもの。日々の努力が必要なことは言うまでもありません。人生は誰でも一度きり。どうか精一杯力を尽くしてがんばっていただきたいですね。

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