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働く人を支える。自らの仕事を世の中のしあわせに|特集|Link and Motivation Inc.
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働く人を支える。自らの仕事を世の中のしあわせに

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  • チメドドルジ・ツェルメグ

    チメドドルジ・ツェルメグCHIMEDDORJ TSELMEG
    パナソニック株式会社 海外マーケティング本部在籍
    パナソニック アプライアンスマーケティング アジアパシフィック社(PAPMAP社)出向
    地域人事 General Manager(マレーシア・クアラルンプール在住)

    2010年10月、パナソニック電工株式会社(現在のパナソニック株式会社)に入社。当時の電器事業本部のマザー工場である彦根工場に配属以降、約8年間工場人事、事業部の人事企画・海外人事を担当。2018年4月に海外マーケティング本部に異動、人事企画担当を経て、2020年4月よりマーケティング地域統括会社であるパナソニック アプライアンス マーケティングアジアパシフィック社に出向。

  • 林 幸弘

    林 幸弘YUKIHIRO HAYASHI
    株式会社リンクアンドモチベーション
    モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員
    「THE MEANING OF WORK」編集長

    早稲田大学政治経済学部卒業。2004年、株式会社リンクアンドモチベーションに入社。組織変革コンサルティングに従事。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員として、日本で働く外国籍従業員のエンゲージメントやマネジメントなどについて研究。現在は、リンクアンドモチベーション内のR&Dに従事。経営と現場をつなぐ「知の創造」を行い、世の中に新しい文脈づくりを模索している。

グローバルHRの最前線に立ち、本社部門の施策を具現化する――。パナソニック アプライアンスマーケティング アジアパシフィック社で、アジア域内での人事施策を推進するチメドドルジ・ツェルメグ氏にその取り組みとパナソニックの魅力を伺った。


原点は、創業者への共感

原点は、創業者への共感
林 幸弘

ツェルメグさんはモンゴルご出身だそうですね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

はい。日本に初めて訪れたのは、大学3年生の時です。1年間の交換留学プログラムで、岐阜県の中部学院大学で社会福祉を専攻しました。高齢者や子どもを企業・社会がどのようにサポートしているか。そこでの学びが「将来どのような仕事をするか」「社会にどう貢献するか」を考えるきっかけになったと思います。モンゴルに帰国して母国の大学を卒業した後、再び来日し、立命館アジア太平洋大学(APU)に進学。日本の企業で働くことを選びました。

林 幸弘

パナソニックとの出会いについて教えてください。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

きっかけは、APU学内での企業説明会でした。当時、他の企業の人事担当者は、日本人の方が多い中、自分と同じ外国籍の女性がいきいきと活躍していることに大きな魅力を感じましたね。そこから、選考に参加していくことになるのですが、出会う人すべてがやさしかったことが印象に残っています。面接時に廊下で待機していた時などは、通りがかる人すべてが私たちに「がんばってね」「緊張しなくていいよ」と声をかけてくれたほどです。

林 幸弘

もともと人事の仕事がしたかったそうですね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

人と関わり、支えていく仕事をしたいと思っていたんです。人事がどんな仕事をするのかも、当時は理解していませんでしたが(笑)。

林 幸弘

パナソニックを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

パナソニック創業者についての本を読んだことです。同社のマネジメントやフィロソフィー、どのような想いで会社を興したのかに共感しました。特に心に響いたのは、「モノをつくる前に、人をつくる」「自分たちの製品で世の中の人々を幸せにして、その対価として利益を得る」といった考え方ですね。こうした思考を大事にしている会社で仕事をしたいと思いましたし、私自身も社会に貢献したいという想いを強く持っていましたから。モノづくりをする人を支えて、その結果、世の中の人々が豊かに、幸せになれる。そう思って、今もがんばっているんです。

あの番組で、日本の流儀にハマる

あの番組で、日本の流儀にハマる
林 幸弘

パナソニックに入社され、最初に配属されたのは工場。モノづくりの現場の人事ですね。この経験は非常に大きかったようですが……。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

配属されたのは、当時のパナソニック電工(株)電器事業本部の製造拠点。古き良き伝統的な職場で、「THE 日本」といった感じでしたね。学生のマインドを捨て、日本企業をより深く知り、日本の働き方を学ぶうえで、貴重な機会になったと思います。

林 幸弘

外国籍の方の中には、日本の慣習・しきたりに違和感や抵抗を覚える人もいるようですが、そうした悩みのようなものはありませんでしたか?

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

私の場合、そうした抵抗は一切ありませんでした。むしろ、その方が好きだった。そこが日本企業の魅力だと思っていましたから。

林 幸弘

そうなんですね。モンゴルと日本に共通する価値観みたいなものがあるのですかね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

APU時代の「日本企業概論」という授業で受けた印象は大きかったのだと思います。授業中は、会社訪問をしたり、「プロジェクトX」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」などのテレビ番組を観たりして、日本の企業とは何か、どういう始祖の部分を文化という面も含めて学んでいました。それがあるから、初配属が工場になっても、違和感やカルチャーショックはなく、どちらかというと、授業で学んでいた世界を自分が体験する楽しさの方が大きかったです。「番組に映っていた場所、世界に来た!」というイメージですね。

林 幸弘

おもしろい授業ですね(笑)。工場での人事を経験された後、同事業部での企画人事を経て、販売を担う海外マーケティング本部の企画人事へと異動となりました。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

次のキャリアとして、販売する部門の人事、海外で仕事をしてみたいと思っていました。人事として海外に行く機会はなかなかないのですが、上司と相談した結果、海外マーケティングを一手に担う部門ならその可能性があるだろうと。希望したことが幸いにもかないました。

林 幸弘

マーケティングの手法や、求められるスキルが大きく変化する中で、グローバルマーケティング人材の育成をどう変えていくか。ここでは、企画人事的な業務を担当されたそうですね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

市場の環境が変化する中で、マーケティング・セールスパーソンに求められるスキルは何なのか。事業部の企画人事を担当していた時、「グローバル技術者の育成」に関わるプロジェクトに参画していたことがありました。モノづくりの現場が海外にシフトしていく中で、グローバルにおける技術者はどうあるべきか、どう育成していくか。求められるスキルは何か。個々の力量はどんな状況か。それらを可視化して、育成施策を考えていきました。その時は、産休を取得したこともあって最後まで見届けることはできませんでしたが、海外マーケティング本部に異動してきて、「グローバルマーケティング人材の育成」と同じプロジェクトに参画する機会ができ、うれしかったですね。企画にとどまらず、それを実践していく役割を任せてもらえることになってよかったです。

アイディアを出すよりも、実現する方が難しい

林 幸弘

自らが企画にも参画したグローバル人事施策。ツェルメグさんは、その実践・実現に向けて、現在はマレーシアのPAPMAP社で活躍されています。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

PAPMAP社はアジア域内での販売戦略を統括している組織です。人事としては、アジア域内に点在する9つの販売会社におけるタレントマネジメント、幹部人材・マーケティング人材の発掘、戦略的育成・強化に向けた取り組みの企画推進し、各販売会社の人事担当と連携しながら進めている状況です。

林 幸弘

その中で、グローバルにおけるマーケッターの育成が大きなミッションとなっているわけですが、マーケティングの常識は劇的に変化していると伺っています。これは単純な人材育成ではなく、変革に近い取り組みだと言えますよね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

そうですね。実際の施策推進も、スキルアップとリスキルの2つの切り口で考えています。eコマースやデジタルマーケティングの知識、ITリテラシーといった新たに求められるスキルを可視化し、それを備えていくための研修や施策を実施しています。

林 幸弘

APAC域内で販売会社が9社あると伺いましたが、国も違えば、市場の環境も文化も違うわけですよね。苦労も大きいのではないでしょうか。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

オンラインが主流になるといった大きな流れは変わらないのですが、会社ごとに事業領域も異なれば、市場の環境も変わってくる。ですので、現在の地域全体の取り組みを各社の規模・状況に合わせて現場に落とし込んでいく必要があります。その際、2~3年先を見据えるとどうかというのがポイントです。現場は、どうしても、単年度かその先の1年を見てしまうケースがあります。そこは、現地の担当と相談して、準備と工夫をしていく形ですね。だからこそ、コミュニケーションには細心の注意を払っています。大切なのは、「何のためにそれをやるのか」「それで何が変わるのか」という目的を共有すること。そうすれば、あとは手段の問題ですからね。それさえしっかりしていれば、自ずとありたい姿に向かっていくものだと考えています。

人事の仕事にマーケティングの視点を

人事の仕事にマーケティングの視点を
林 幸弘

現地で人事施策を実践していくうえで、苦労したエピソードはありますか?

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が始まり、研修活動がほぼ1年間止まってしまった時、アメリカのオンライン研修を導入したのですが、思うように浸透せず、各拠点の意欲もまちまちという状況が見られたことがありました。従業員の意識調査では、研修を受講する機会が減った、もっと機会を提供してほしいというフィードバックが多く、実際、それに応える形で発信したのですが……。企画を現場に落とし込み、実現していく、その難しさと重要性を痛感しました。

林 幸弘

そうした厳しい状況をどのように打開されたのでしょうか。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

やはりコミュニケーションだと思います。研修の機会があっても、それを受けようと思う気持ち、意欲がないと効果は低いです。いかに、従業員本人自らが学びに行く環境をつくるかです。そのためには、「なぜ」の部分をしっかり発信していくことだと思います。オンライン研修プラットフォームを導入して2年目、今年は従業員のエンゲージメントに特化したオン・オフの活動を企画して、取り入れていけるように準備しています。マーケティングの視点を人事の取り組みに取り入れてみることですかね。

林 幸弘

マーケティングですか?

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

マーケティング人材と向き合い、支援する中で、彼らが持つ知見に関心を持ったのがきっかけでした。彼らがお客様と向き合っているのと同じように、私も彼らと向き合ってみようと。何を考え、何を想い、何を望み、どうすればファンになってもらえるのか。そんな視点で物事を考えるようになったんです。研修レポートを掲載したり、デモンストレーションを行ったり、SNSで意見交換の場をつくったり、ウェビナーを開催したり……。試行錯誤の連続ではありますが、さまざまな取り組みを実践するようになりましたね。

林 幸弘

モノをつくる前に、人をつくる。入社時に共感した理念ではありませんが、強い使命感を持って仕事に臨まれているのですね。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

私がいることで、変わることは何か、生まれる付加価値は何か。バリューにこだわる意識がとにかく強く、そこにどこに行っても変わらない“私らしさ”であると思っています。

個が輝く組織をつくること

個が輝く組織をつくること
林 幸弘

ここまで、現在の取り組みについてお話を伺ってきましたが、現状で感じる課題などがあればお聞かせください。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

HRの施策は、すぐに目に見える成果が出るものではありませんよね。5年先にこの活動が実るのか、それとも実らないのか。そこに難しさを感じています。また、海外では人の流動性がありますから、人が育っていっても、離職されてしまうのが実態です。組織として、各国・各社のカルチャーに合った持続的な人づくりとは何か……。

林 幸弘

貴社の吉田本部長もお話しされていましたが、そこは大きなジレンマですね。かといって、人材への投資をなくすわけにもいきません。日本企業的な経営から生まれる「好き」のような感情や企業理念への共感は、これからの経営にとって大きなアドバンテージになると思っています。

チメドドルジ・ツェルメグ
ツェルメグ

そうですね。私自身、創業者の想いに共感してパナソニックに入社しましたし、その想いをみんなが共感・納得して、日々の行動の土台としているところに大きな魅力を感じています。共感できる理念とすばらしい仲間がいて、やりたいことを具現化できる。顧客に向けて、今までにない価値を創造し提供できる。それができた時に、それにふさわしい報酬を得られる。だからこそ、一人ひとりが選んで、この場所にいる。個が輝き、個が持っている力を最大限に引き出している組織がある、そういう状態をつくることが人事の仕事なのではないでしょうか。

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