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HUMAN POTENTIAL LAB × THE MEANING OF WORK 人の未知なる可能性が、社会を変容させる。|新たな「知」の冒険|Link and Motivation Inc.
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人の未知なる可能性が、社会を変容させる。

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  • 山下 悠一

    山下 悠一YUICHI YAMASHITA
    株式会社ヒューマンポテンシャルラボ 代表取締役 CEO

    早稲田大学理工学部建築学科卒業。2002年、アクセンチュア(株)に入社。コンサルタントとして大企業のチェンジマネジメントに携わり、人と組織のパフォーマンス向上に貢献する。12年間勤務した後、米国カウンターカルチャー、禅、ヨガ、ネイティブアメリカンなどの古代叡智と最先端のウェルビーイングテクノロジー(トランステック)などの体験を経て、2018年に(株)ヒューマンポテンシャルラボを設立。「ヒトの未知なる可能性をひらく」をスローガンに、ウェルビーイングに関するラーニングプラットフォームを運営。クリエイティブな仲間たちとともに個人と社会のウェルビーイングとパフォーマンスが統合した世界を目指す。

  • 林 幸弘

    林 幸弘YUKIHIRO HAYASHI
    株式会社リンクアンドモチベーション
    モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員
    「adventures in knowledge」編集長

    早稲田大学政治経済学部卒業。2004年、(株)リンクアンドモチベーションに入社。組織変革コンサルティングに従事。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員として、日本で働く外国籍従業員のエンゲージメントやマネジメントなどについて研究。現在は、リンクアンドモチベーション内のR&Dに従事。経営と現場をつなぐ「知の創造」を行い、世の中に新しい文脈づくりを模索している。

これまでの価値観や能力の延長線上では、イノベーションを生み出すことはできない。ビジネスで新しい価値を生み出すためには、個人がより幸福を感じるためには、よりよい社会を実現するためには、人の新たな可能性を切り拓いていく必要がある。これからの人材育成はどうあるべきか。攻めのウェルビーイングが秘める可能性とはどのようなものか。ヒューマンポテンシャルラボ CEOの山下悠一氏に話を聞いた。


本当に幸せなのか。自問自答からの起業。

本当に幸せなのか。自問自答からの起業。
林 幸弘

まずは、山下さんのバックボーンについて伺いたいと思います。人の可能性を追求する(株)ヒューマンポテンシャルラボを立ち上げた経緯をお聞かせください。

山下 悠一
山下

2002年にアクセンチュア(株)に入社し、コンサルタントとして大企業のチェンジマネジメントに携わっていました。人が変わって、組織が変わって、社会が良くなる。それが私のアイデンティティーであり、現在もそれは変わっていません。当時の社会は、どうしてもパフォーマンスアップや数字を追求するあまり、体を壊したり、人間関係を壊したりする人が多かったし、私自身も同じ苦しさを味わっていました。今で言うウェルビーイングや、家庭を犠牲にして、頑張ってきたわけです。アクセンチュアをドロップアウトし、ヒューマンポテンシャルラボを立ち上げたのは、「それって本当に幸せなんだっけ?」「本当に社会はより良くなってるんだろうか?」という疑問を感じたから。個人の内面的な成長とウェルビーイング、そして社会のソーシャルウェルビーイングという両極をいかに統合していくかという壮大なテーマに挑み、「人間の可能性とは何か?」を探求し続けるようになりました。

林 幸弘

ヒューマンポテンシャルラボの拠点は鎌倉(神奈川県)にあります。鎌倉の地を選んだ理由はどこにあるのでしょうか。

山下 悠一
山下

実は、創業の地として鎌倉を選んだわけではないんです。住み始めたのは2007年のこと。当時、私は28歳で、コンサルタント時代の絶頂期にありました。仕事で成果を出していれば、時間の使い方は自由になるし、金銭的な報酬も得られる。おしゃれな街に住み、いい車に乗って、豪遊する……。そんな毎日を過ごしている中で、その状態に満足してしまったし、その先に不安を抱くようになったんですよ。このまま一直線に年収を上げていって、出世を目指す。追い詰められていくような怖さもあったし、「これで本当に幸せなのか」とも感じ始めていた。そこで機械のような働き方をやめて、バランスをとらないとおかしくなってしまうと、鎌倉に住むことを決めました。決め手は、歴史や文化があって、かつ自然豊かな街であること。1年かけて、さまざまな物件を見て回りましたよ。

林 幸弘

私もそうですが、2000年代は、多くの人が1分1秒を惜しんで働いていた。そこに違和感を覚え、越境したというわけですね。

山下 悠一
山下

鎌倉発上場企業の(株)カヤックはIT企業の中ではその当時では珍しく、鎌倉に本社を置いていたのですが、彼らのようなクリエイティブな人材が創造力を発揮するためには、やはり環境が大事だというんです。また、鎌倉で得た人とのつながりも、私にとって何よりの財産になっています。私自身もクリエイティブな共創プロジェクトを通じて、たくさんの刺激をもらえました。住んでみて、たくさんの人とつながって、もっともっと鎌倉が好きになっていった感じですね。

林 幸弘

そうしたご縁や人の温もりは、なかなか東京では感じられないのかもしれませんね。

山下 悠一
山下

接するのは会社の人や友人、恋人くらい。東京では、同じマンションの住人でも挨拶をしませんからね。当時はどこか孤独を感じていた気がします。鎌倉に来て、いろいろな人とコミュニケーションをとるようになりましたよ。地元のお肉屋さんのオヤジと何気ない会話を交わすのですが、無表情・無反応で淡々と取引を処理する東京のコンビニ暮らしとの違いを痛烈に感じました。人とのつながりが感じられることがいかに幸福度につながるかを身をもって実感し、コミュニティの存在を強く意識させられるようになったと思います。

個人の内面的充実がこの世界を変える。

個人の内面的充実がこの世界を変える。
林 幸弘

昨今、ウェルビーイングという言葉が頻繁に聞かれるようになりました。ウェルビーイングの市場動向や、その重要性について教えてください。

山下 悠一
山下

大きなターニングポイントになったのは、やはり2023年に人的資本の情報開示が義務づけられたことでしょうね。これまでの経営では、人が大事だと言いながらも、それが数字や有価証券報告書に反映されなかったものが、企業の経営者も投資家も、本気でそこに取り組まなければならなくなったわけです。そうした中で、ウェルビーイングに関しても大きな注目が集まるようになっています。Googleのトレンドサーチを見ても、10年前と比べて10倍以上の注目が集まるようになっていますし、政府でも2021年にウェルビーイングに関するKPIを各省庁の基本計画に設定することが明言されました。業界的には「ウェルビーイング元年」といわれています。ウェルビーイングって、新しい資本主義社会の中での「人間性の問題」なんですよ。テクノロジーが目覚ましい進化を遂げたAIの時代において、ますます「人間とは何なのか」が重要になってきます。これまでの社会で失われつつあった人間性を回復し、テクノロジーと共創・共存し、新たな能力を開発する。このことは非常に大きな課題であると考えています。

林 幸弘

ヒューマンポテンシャルラボは、人間性を回復し、人の可能性を切り拓く存在です。その社名にはどのような由来があるのでしょうか。

山下 悠一
山下

社名の由来となったのは、1960年代にスタンフォード大学出身の2人が立ち上げた「エサレン研究所」から始まった、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント(人間性回復運動)です。ここには、数多の心理学者やボディーワーカー、ヨガや瞑想研究家といった人の内面を開発するプラクティショナーが集い、リトリートプログラムの実施・開発・共創が行われていました。このムーブメントから生まれた起業家、Apple社創業者のスティーブ・ジョブズ氏であり、彼が禅に傾倒していたのは有名な話です。この運動は、アメリカのベトナム戦争、公民権運動、大量消費時代のカウンターカルチャーとして生まれたものであり、個人の内面的な充実が世界を変えるというガンジー の思想などにも影響を受けたものでもあります。私はこの活動を日本からやるべきだと考えて、今の会社を立ち上げました。日本が持つ内面的な充実や精神性は、古くから世界の最先端を行くものであったと私は考えています。それを海外から輸入された概念ではなく、日本から逆巻きに発信していく。そこには非常に大きな意味があると思っています。

エサレン研究所
林 幸弘

禅の文化が広まったのは、鎌倉時代。そこから武士の精神的支柱になったといわれています。鎌倉から、日本の精神性を発信していく。何か縁のようなものを感じますね。

山下 悠一
山下

こうしたビジネスを立ち上げたのには、コンサルタント時代の反省もあったんです。古き良き日本式の経営に、アメリカから輸入した科学的なマネジメントを当てはめたことで、悪い部分もなくなったが、良い部分も失うことになってしまった。失われた20年の要因って、そこに尽きると思うんですよ。私たちの取り組みは、特に戦後から失っていった日本のアイデンティティーともシンクロしてくると考えています。

林 幸弘

海外のアプローチは、要素分解的にそれぞれの課題に取り組んでいきます。すべてを一元的につながっているとする日本では、なかなか相容れない部分も出てきますね。

山下 悠一
山下

個人か組織か、西洋か東洋かという意味では、それも二元的ですよね。これからを生きる私たちは、その境界を含み、越えていかなければいけないんです。どちらかではなく、統合する。その手のイノベーションって日本は大得意ですから、この分野は大きな可能性を秘めているんですよ。世界中のおいしい食材を使って、それらを融合させ、新しい料理を生み出す。カレーやラーメンがそうでしたよね?

ぬるま湯状態で可能性は開花しない。

ぬるま湯状態で可能性は開花しない。
林 幸弘

変革期を迎えている日本企業では、コア人材に投資し、今までにない人材を育成することで、ビジネスを変化・適応させようとしています。ただ、ほとんどの企業で人材育成にブレークスルーを起こせていない現状があります。

山下 悠一
山下

優秀な人が陥っているジレンマに「認知バイアス」があると思うんですよ。右肩上がりの成長を続けている時は、組織の評価やルールに従って、何が正解かを考え、それをよりスピーディーにこなせる人が優秀だった。けれども、今は正解のないVUCA※1の時代。たとえ間違っていたとしても、自分なりに「こうなんじゃないか」と考え、執着を持ってやりきることができなければ、新しいものは生み出せない。左脳的な論理の世界にどっぷり浸かって、右脳的なアート思考・デザイン思考が必要だと言われても、自分がどう感じているかも答えられないし、内的な動機も欠如している。優秀な人のジレンマは、とにかく大きくなっていると感じます。日本の場合は特に、ですね。

林 幸弘

人の可能性や組織の変革を目指すうえで、認知バイアスは強敵ですね。環境もその問題をさらに深刻にしている気がします。チャレンジして失敗するよりも、冒険を控えて堅実に歩んでいったほうが出世する。恐怖の評価システムによって、自分の居場所から出ないほうが得だと思い込んでしまうという。

山下 悠一
山下

同じような例を挙げると、多くの企業では、ウェルビーイングをアメのように差し出していますよね。「こんな研修を用意していますよ」とか、「こんな特典が受けられますよ」とか。それだと本当に優秀な人材が「このまま行けばいいや」とコンフォートゾーンから出ようとせず、ぬるま湯状態に陥ってしまうんです。一方で、成果にこだわりすぎたウェルビーイング施策だと、それが強制になってしまう。本当に必要なのは、成果だけでなく、個人の在り方を変えていけるような全方位的な能力開発。つまりは「攻めのウェルビーイング」なんです。

林 幸弘

個人の在り方まで変える全方位的な能力開発。まさに、人の可能性を引き出すというわけですね。ただ、現代の企業は、働き方改革やPL至上主義、四半期決算、コンプライアンスなどの影響もあって、子会社をつくったり、新事業のプロジェクトを立ち上げたりといった「修羅場経験」の場をつくることが難しくなっています。

山下 悠一
山下

せっかくスキルや知識を身につけても、それを使う場がない。だからこそ、越境なんですよ。都会と地方をクロスさせていくことが、その解決策になると思っています。首都圏と比べると、地方にはたくさんの社会課題が表出している状況です。けれど、それらを解決するための人材は不足している。小さな実証実験をしてもいいし、ワークスタディー形式の育成プログラムがあっても、移住して半X※2のような生活をしてもいい。地方には、新しいリーダーシップ開発経験があふれているんです。一皮むける経験もできるし、地域も盛り上がるし、新たなつながりもできる。これほどおいしい解決策はないと思いますよ。かつては、東京か地方かと聞かれたら、絶対に東京だと答えていましたが、これからはその二元的な選択ではなく、どっちもありのグラデーションのような状態になっていくでしょうね。

※1 VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性):変化が激しく、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態を指す。
※2 半X:収入を得るための仕事とは別に好きな仕事(=X)に時間を費やすライフスタイル

手放すことにはいつも痛みが伴う。

革新の原動力はポンコツさ?
林 幸弘

都会と地方をクロスさせる越境型の人材育成。その象徴的な取り組みが、福井県・永平寺町でのプログラムだと思います。これは、どのような教育プログラムなのでしょうか。

山下 悠一
山下

禅の聖地で自己の内面と世界の安寧に向き合う、特別リトリートプログラムです。永平寺は、曹洞宗の世界的な中心地であり、かのスティーブ・ジョブズ氏も憧れていた禅の聖地です。ここで、禅の精神を身体感覚として感じてもらい、イノベーションにつなげていくプログラムになっています。この地には、衣食住・文化・産業とあらゆるところに禅の精神が根づいているんです。精進料理はもちろん、地元のお酒とスピリチュアリティには切っても切れない関係性が感じられますし、この地に移住してきた方が営む喫茶店では、マインドフルなコーヒーを堪能できます。ただ、永平寺町の魅力をPowerPointの資料でプレゼンしても、全然伝わらない(笑)。やはり、その場所に行ってみないとわかりませんね。

林 幸弘

確かにそうですね。ただ、私の目には、とても魅力的に映りますよ。教育プログラムの特徴はどのようなところにあるのですか。

山下 悠一
山下

通常の学びは、新しい知識を自分にプラスしていくラーニング。でも、禅の学びはアンラーニングであると言えると思います。これまでの認知を「手放す」のです。自己理解・他者理解を深め、内省のプロセスを経て、自分が成し遂げたい想いやイノベーションのアイデアを生み出し、腹落ちする。そこから、行動が生まれていく。最先端のリーダーシップ開発だと自負しています。このプログラムは福井銀行グループのふくいヒトモノデザイン(株)と共同で進めているのですが、そこで接する皆さんの意識の高さには本当に驚かされています。ウェルビーイングをいかに経営につなげていくか。彼らは、首都圏の企業とは違って、その重要さを体験し、理解しているんですよ。

林 幸弘

「手放す」ことって本当に難しいし、痛みを伴いますよね。以前、自分の仕事のパターンから抜け出せず、結果が出ずに行き詰まり、仕事へのエネルギーがなくなりかけていたことがありました。イノベーティブなことをして結果を出している先輩に比べ、自分が提供している価値は「おもしろくないな」って。そんな状況を打破したのが、やはり越境でした。おもしろいことをするには、自分がおもしろいことをしなければならない。社会の中の自分が会社にいるとなった時に、やっと上手にバランスがとれるようになったんです。

山下 悠一
山下

立石一真氏の「SINIC(サイニック)理論」では、自律社会・自然社会へと移行するには大きな変容が必要だとされていますが、人事の世界では「個人の自律」というテーマが20年間、変わらずに残り続けていますよね。まったくイノベーションが起きていない(笑)。組織の目標があって、個人はその目標達成の手段である、という大前提の中で、自律しなさいと言うのは、ものすごい矛盾ですよ。組織と個人のヒエラルキーが逆転しないかぎり、個人は会社にとって手段のまま。進化型の組織を実現して、個人と組織の関係性のパラダイムシフトを起こしている企業って「発想がぶっちぎっているところ」に限られますよね。

林 幸弘

リンクアンドモチベーショングループでは、個人の存在をアイカンパニーと定義し、会社と相互に選択し合う関係を築こうと考えています。ただ、私自身、越境して、それを還元できるようになって、ようやく会社と対等な関係を築けるようになったと思っています。

山下 悠一
山下

会社自体も「手放す」をチャレンジしているんですね。「言うことを聞かないと居場所がなくなるよ」ではなく、「好きにやっていいよ」と。たぶん、林さんが自ら「手放す」を実践することで、個人と会社が対等にギフトを循環しあう状態をつくったんだと思います。アンラーニングすることって、個人だけでなく、組織のドライバーにもなるんですよね。

林 幸弘

ただ、正直、痛かったし、苦しかったですよ。

山下 悠一
山下

成長と変容の違いは、前者が単線的な右肩上がりであるのに対して後者は、死と再生のサイクルなんですよ。死ぬ時は苦しいし、人間だって泣きながら生まれてきますでしょう? 痛いことは誰もしたがらない。だから、ウチの会社はなかなか採用されにくく、儲からないんです(笑)。

林 幸弘

変容には、痛みが伴うし、必要なこと。「でも、自分はしたくない」となりがちですよね(笑)。

革新の原動力はポンコツさ?

林 幸弘

経営や人材育成に、地域での体験やリベラルアーツを活かすことは、本質的なイノベーション投資だと思います。研修費をいくら投じたかよりも、その中身を開示する。そうしたムーブメントのほうが信頼できると思いますし、期待も大きくなりますから。

山下 悠一
山下

そうですね。でも、いわゆる人材のポテンシャルって、強みであるとか、技術であるとか、光の部分ばかりがクローズアップされるじゃないですか。でも、私は影の部分、その人だけが持つ際立った特性やポンコツさこそが大事で、AIに勝てる部分だと思っているんです。イノベーションって、「今までにない突き抜けたこと」を腹をくくってやることですからね。

林 幸弘

おもしろいですね。その意味では、上司やリーダーの在り方もそうした方向に変わってきている気がします。

山下 悠一
山下

自分の弱さをさらけ出せる、バルネラビリティが重要なファクターだとされていますよね。これができる人は無敵ですよ。「自分にはこんなにも弱いところがある。でもどうしてもコレを成し遂げたいんだ。だからどうか私を助けてほしい。」というメッセージはメンバーにとって心強いと思いますし、そうした人は助けたいと思うじゃないですか。どんなに完全無欠を繕っても、もっとすごいリーダーや会社も自分で選べる時代ですし、AIには勝てないので、マッチョなリーダーは共感が得られずリーダーシップを発揮できない時代なんです。

林 幸弘

確かにそうですね。考えてみれば、少年漫画のヒーローも、最近は弱さをさらけ出すタイプのキャラクターが多い気がします。

山下 悠一
山下

そうですね。だから共感できるし、応援したくなる。それは現実の世界と変わらないのかも。

グローバルリーダーは日本で修行するべきだ。

グローバルリーダーは日本で修行するべきだ。
林 幸弘

これからの世界は、社会はどう変わっていくと思いますか。

山下 悠一
山下

機械的でロジカルにつくられた金融社会、物質的な世界はもうたくさん。そう思っている人も多いはず。これからは、自然に回帰しつつ、それをテクノロジーが支えてくれるような社会になっていくと思います。例えば、今、私は、睡眠や健康データを正確に取得・分析できる「オーラリング」という指輪をつけていますが、このテクノロジーは、人の野生性を邪魔するものではありません。データドリブンで暮らしを見つめ直して、より自分らしく、健康に生きられる。金銭的な豊かさだけでなく、内面的にも豊かになれる。昨今、欧米で注目されている概念「Human Flourishing(ヒューマン・フラーリシング)」な世界の実現に貢献したいと考えています。現在でも、人の内面を磨くための取り組みをAIと対話しながら考える、といったこともしていますからね。

林 幸弘

テクノロジーが人のポテンシャルを引き出す支えになってくれるわけですね。

山下 悠一
山下

デジタル縄文時代とでも言うのでしょうか。昔のネイティブアメリカンの人たちは、森の中で2km先で鉛筆が落ちた音を察知できたといいます。それって本来、人間が備えている能力なんですよね。仙人やシャーマンと呼ばれる人たちしかできないことが、みんなにできるようになる。そうなったら、人の能力開発はもっと面白いじゃないですか。

林 幸弘

おもしろいですね。一方、日本の精神性や内面的充実コンテンツは、インバウンドの面でも大きな可能性を秘めていますよね。

山下 悠一
山下

「Japan Brand Image Research※3」の中で、日本のコンテンツのどこに価値があるのかという調査において、日本に対するポジティブイメージ7つの中で、Spirituality in natureが挙げられています。震災時の人々の行動や、スポーツ選手の振る舞いは、海外でも大絶賛されていますよね。こうした精神は、それぞれの地域で育まれたもの。言うなれば、日本全国が世界の聖地なんです。グローバルリーダーなら、日本に来て修行をするべきだ。それが世界の常識になる日も来るかもしれません。

林 幸弘

そうなれば、私たちも誇らしい気持ちになれますね。

山下 悠一
山下

熊野(三重県)にGoogle社の幹部が訪問した際に、地域にお住まいの方々は「なぜ、こんなところに?」と疑問を抱いたそうですが、その結果、自己肯定感が高まったそうです。日本の神社仏閣やリトリートセンターが新たなリーダーの育成拠点になっていくというビジョンを持っています。あり得るシナリオだと思いますよ。

林 幸弘

本日は、「人の未知なる可能性が、社会を変容させる。」というテーマでお話を伺いました。貴重なお話をありがとうございました。

※3 Japan Brand Image Research:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/file/research_of_japan_brand_image.eng.pdf

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